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20160816_0
- 2016/08/16◥
- SYSTEM◥
- 01:31:28
- オラツィ様が入室しました。
- オラツィ◥
- 01:31:51
- 辺りはもうすっかり暗くなってしまって、こんなところにいるのはきっと俺一人だ。
- 01:31:58
- 聴こえるのは寄せ返す波のリズム、夜風に揺れる木の葉のノイズ、それから、その向こうにある町の人々の声。
- 01:32:10
- ここはバリアール。十の浮船亭のある、オルレイアから空船ですぐの港町だ。
- 01:32:16
- 最近は依頼でこっちに来ることも増えた。あと、他の地域の海にも一人で行って帰ってこれるくらいにはなった。
- 01:32:25
- そうして間近で海と接することが多くなって、より一層強く感じる、一つのこと。
- 01:32:32
- やっぱり、海は何かが特別だ。何かは分からない。今の俺にはないものがある。
- 01:32:40
- 「……今の俺にはないもの」
- 01:32:47
- ……そんなものはいくらでも思い当たる。足元の砂を握りしめた。
- オラツィ◥
- 01:32:58
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- オラツィ◥
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- オルレイアに来てからというもの、本当にいろんな人に出会った。
- 01:33:13
- 巨大な盾を持って、叩き落として敵を薙ぎ払う、声のない女性。
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- 馬やゴーレムを巧みに操って戦う、陽気なエルフ。
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- 少し前までは変な着ぐるみを着ていた、みんなを守ってくれる神官。
- 01:33:30
- 重そうな斧を軽々と、元気よく振り回して戦う女の子。
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- 一番多く一緒に冒険に出たのは、何よりも多分、……マオと、カイの二人。
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- 他にももっと、思い出したらキリがないほど多くの魔法使い、戦士、神官さんがいて、そして……、
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- 「俺だって、……同じ冒険者として……、」
- 01:34:14
- 俺は、到底彼らには追いつけない。追いつく必要がない、それもそうだろうけど。
- オラツィ◥
- 01:34:24
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- オラツィ◥
- 01:34:37
- 俺は戦士や剣士のように、敵からみんなを直接守ることはできない。
- 01:34:44
- かといって神官のように、一度にみんなを回復させたりもできない。
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- そして他の魔法使いのように、多彩な魔法で相手を翻弄したり、弱体化させることもできない。
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- さらには、……カイのように、百発百中で相手を仕留めることもない。
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- 「……今の俺に、必要なもの……」
- オラツィ◥
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- 01:35:19
- 「カイにあって、俺にないもの」
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- オラツィ◥
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- カイとは同じ時期から同じように冒険者として成長してきたけれど、射手としての実力はカイの方が上だ。
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- 俺はその分、魔動機術に長けている。カイに使えない魔法を、いくつか使える。
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- 「……だからなんだって言うんだろう」
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- 「……当てなきゃ同じなんだ、撃ってないのと……」
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- 他の多くの魔法使いは、自分の命中力を気にしている様子がない。
- 01:36:19
- というか、『魔法を当てること』それ自体が『魔法を使うこと』の条件なんだ。当てて当然。それが基本の考え方。
- 01:36:25
- だから、俺やカイのような魔動機師でガンを使う場合、まずガンの取り扱い、つまり射手としての熟練度を重視する。
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- それだって当然だ。命中させることが全てだから。
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- 「……俺に今から、何ができるか」
- オラツィ◥
- 01:36:43
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- オラツィ◥
- 01:36:56
- 今更射手としての特訓を積んだところで、それでみんなに置いて行かれるだけだ。
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- みんなは俺を信頼してくれている。裏切るわけにはいかない。
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- 「みんなにあって、……俺にないもの」
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- いくつかある。そして、みんながいとも簡単そうに、当然のようにやってのけること。
- オラツィ◥
- 01:37:24
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- オラツィ◥
- 01:37:29
- 練技が、その一つだった。
- オラツィ◥
- 01:37:33
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- 01:37:42
- カイは、いや、他の多くのガン使いたちは、練技を扱う。特に、【キャッツアイ】を。良く知られている話だ。
- オラツィ◥
- 01:37:50
- それに、カイだけじゃなく、マオやイクス、他の沢山の戦士たちも、いくつかの練技を扱えることはもはや当然だった。
- 01:38:03
- ……俺には、どうしても扱えない。
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- 種族として肉体的にか弱いタビットの中でもさらにいっそう体力がない俺には、そんな方法はまるで見当もつかない。
- 01:38:20
- 何度か試したことはある。部屋で、一人で。ゲティにも協力してもらったことがあったっけ。
- オラツィ◥
- 01:38:26
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- オラツィ◥
- 01:38:34
- 「……“瀑布”、か」
- 01:38:46
- 今まで何度も手にしてきた、俺用にカスタマイズしてもらった〈カルネージⅡ〉や〈ジェザイル〉。
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- 数日前、ゲティを通して知り合った職人さんから伝えられた、ようやく決まった、という、その銃の名前。
- _ 職人 _◥
- 01:39:12
- 『青い身体をしていらっしゃるんで、ぴったりだと思うんですよ。“瀑布”に“雪渓”、“渦雷”、“早瀬”。』
- オラツィ◥
- 01:39:32
- 滝、沢、嵐、川。どれも水に関連する名前で、それでいてシンプルで、正直気に入っている。
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- 「名前負けな感じも、するけどね……」
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- その“瀑布”を手に取り、静かに構えた。海に向かって。
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- 視界の先には何もなかった。夜闇が広がっている。ただ、海面に映る月が、視界の隅にあるだけで。
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- 俺はそのまま、瞼を閉じる。
- オラツィ◥
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- オラツィ◥
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- ……波の音がする。寄せては返す、波の音。
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- 「……今の俺に、必要なもの……」
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- 一定のリズムで、ひたすらに、執拗に。……止まることなく。
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- 「海にあって、俺にないもの」
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- すぐに諦めてしまうから、いけないのか。……そうかもしれない。
- オラツィ◥
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- 呼吸を海に合わせる。瞼は閉じたままで。
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- ……この思考を、この集中力を、肉体に向ける。
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- 01:42:19
- ただ波の音を、……そして、全身の神経を……。
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- まずは、どこだ……眼だ。……カイやマオの使う、あの……、
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- オラツィ◥
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- 海に沿わせた意識を拾い上げて、俺はゆっくりと、目を開いた。
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- その視界は、遥か向こうまで……
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- 霽れ上がっていた。
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- 「えっ、これ……」
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- そっちかよ。俺は覚えず、海の方へ駆け寄った。水面を見る。
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- そこに映る自分の眼は金色に光っていて、そして、さっきまで辺りを覆っていた暗闇はどこかに消え去っていた。
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- ……消え去っているかのように見えた。夜闇など、嘘のように。それはまるで、梟のように……、
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- 「【オウルビジョン】……」
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- ちょうどこの前、バジルが使っていたっけ。暗闇をものともせずその先まで見通せる、梟の視界を得る練技。
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- 「それもまあ、そうか、……まだまだだな、俺、やっぱり、……はは」
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- 思わず、笑いがこぼれた。その場にへたりこんだ。波はまだ容赦なく、俺を攫いに来る。
- 01:44:38
- 「……海の思考、瞑想……」
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- 「……海と共に、……それだって方法かもしれない」
- オラツィ◥
- 01:45:10
-
- オラツィ◥
- 01:45:23
- ……まあ、何はともあれ、練技の使い方を掴むことは出来たんだ。この方法をしっかり体得すれば、なんとかなるだろう。
- 01:45:28
- 俺はゆっくりと腰を上げた。
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- 「よい、しょっと……。ああ、瀑布、またメンテナンスしなきゃ、……」
- 01:45:45
- 海に背を向けて、歩き出す。波の音は絶えない。
- オラツィ◥
- 01:45:56
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- オラツィ◥
- 01:46:15
- 辺りは遥かな月の光の下。見渡す限り、海岸にいるのはどうやら俺一人だ。
- SYSTEM◥
- 01:46:22
- オラツィ様が退室しました。
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