ルゥ:「 少し散歩でもしましょう 」 すたすた
ピーター:「お・・・おう。」ついていく
ルゥ:無言で少しの間歩き
ルゥ:近くの川辺のほとりに向かう
ルゥ:「 それで 」
ルゥ:「 何の話でしたっけ 」
ピーター:「うん・・・いや、ルゥはきっと、聞かれたくない隠し事とか、あるんじゃないかなって」
ルゥ:「 人間誰しも一つや二つくらい抱えているのではないでしょうか 」
ピーター:「まあそりゃそうだけどさ」
ルゥ:「 私は聞かれたくないというか 」
ピーター:「うん」
ルゥ:「 聞かせると私を見る目が変わるので喋りたくない秘密ならいくつがありますよ 」
ピーター:「・・・。それは、今俺が聞いちゃいけない話?」
ルゥ:「 ピーターさんならそんなこと無いっていうと思いますよ 」
ルゥ:「 ただ時期尚早かと 」
ピーター:「・・・そうか。」
ピーター:ほんの少し寂しそうな表情を浮かべる
ルゥ:「 ふぅ 」
ルゥ:ため息一つ、足元の小石を掴んで川に放る
ルゥ:「 聞きたいですか? 」
ピーター:「・・・おう、もちろん。」
ピーター:「ただ、ルゥがそれで無理をするなら、話さなくてもいい。」
ルゥ:「 じゃあやめます 」
ピーター:「・・・そっか。」ほんの少し笑う
ルゥ:「 ただ何も言わないのもアレなんんで 」
ルゥ:「 私の知っている昔話をしてあげましょう 」
ピーター:「お、おう。」
ルゥ:「 昔々あるところに腕のいいドワーフの職人(男)がいました 」
ピーター:「・・・うん。」
ルゥ:「 彼の金物の作り方はとても特徴的で、その道の人たちからは評価をされると共に嘲笑も受けていました 」
ルゥ:「 それもそのはずです、魔力を込めた握りこぶしで熱した金属を叩いてたのですから 」
ルゥ:「 まぁ彼も職人の多分に漏れず、気難しい性格をしていました 」
ルゥ:「 しかしながらその腕のよさで彼が住んでいた地方の貴族にはひいきにされていたようです 」
ピーター:「・・・」話を聞いている
ルゥ:「 そんな彼も貴族の紹介を受けて伴侶を見つけました 」
ルゥ:「 紅い髪が特徴的な人間の女性です 」
ルゥ:「 彼の作ったものを街で見かけ、気に入ったみたいで一度姿を見たいと彼の家まで訪ねていき 」
ピーター:「・・・」少し驚いた顔を見せる
ルゥ:「 何がどうしてそうなったのか分かりませんが大層その女性は彼の事を気に入ったようで 」
ルゥ:「 半ば押しかけで妻となったそうです 」
ピーター:「・・・うん。」
ルゥ:「 でまぁ、やるべきことはしっかりとやってくれやがったみたいで 」
ルゥ:「 子供を授かりました。 」
ルゥ:「 出産は非常に大変で、母体にも多大な負担がかかってしまいました 」
ルゥ:「 端的に言うなれば少し頭が弱くなってしまったみたいで 」
ルゥ:「 とはいえ子供は若干肌が青白い事を除けば元気で活発な子でした 」
ピーター:「・・・」
ルゥ:「 父親の工房にいっては父親の作業の妨害などをして拳骨を頂いた事も少なからずあったようです 」
ルゥ:「 たまにしつけが度が過ぎるときがあったようですが、それを止めるはずの母親がひよってしまっていて止めてくれる人はいませんでした 」
ルゥ:「 基本的に外出などすることはありませんでしたが友達は少なからずいたそうです 」
ルゥ:「 そして多感な10代前半を迎えました。 」
ルゥ:「 そこで子供は残酷な、ある意味では避けようも無かった運命に直面するのです 」
ピーター:「・・・」真剣になる
ルゥ:「 父親の元へ件の貴族がやってきました 」
ルゥ:「 避暑がてら暫く滞在するという事で家族も連れてきました 」
ルゥ:「 ちょうど同じくらいの年だったそうなので双方の子供らは仲良く遊んでいました 」
ルゥ:「 そして、そうですねとても日差しが強い日です 」
ルゥ:「 木陰を縫って流れている小川が家の近くにあったので子供らは近所の子供も集めて川遊びに行きました 」
ルゥ:「 そして水を掛け合ったり、小魚にちょっかいを出したりなどして遊んでいました 」
ルゥ:「 そして川でどたばたと遊んでいれば必然的に誰かが足を滑らせますね 」
ピーター:「う・・・うん」
ルゥ:「 ただ、転んだのが職人の子 」
ルゥ:「 そして転んだ先にいたのは浅瀬で遊んでいた貴族の子 」
ルゥ:「 職人の子は額から転び、何故か貴族の子は切り傷を作ってしまいました 」
ルゥ:「 理由を探る為に子供達は辺りを探し回りましたが理由が見つかりません 」
ルゥ:「 そうなれば必然的に職人の子が怪しまれるわけですね 」
ピーター:「・・・」
ルゥ:「 そして押し倒され、身体を調べられたところ 」
ルゥ:「 ふぅ、疲れました 」
ルゥ:「 少し休みましょう 」
ルゥ:「 どうです、まだ聞こうと思いますか? 」
ピーター:「そ、そうだな」
ピーター:「俺は、聞きたいよ。ルゥのことだから」
ルゥ:「 では続きを、ここから物語は大きく動き出します 」
ルゥ:「 身体を調べられたところ、額には小さな瘤が 」
ルゥ:「 いえ、瘤ではなく小さな、、、、小さな角がありました 」
ルゥ:「 当然子供達ですから他人と違うところがあれば囃し立てますね 」
ルゥ:「 それだけですむならよかったのですが 」
ルゥ:「 貴族の子は腕をけがしただけだと、そう伝えたのです 」
ルゥ:「 他の子でした。 親にそれを伝えたのです。 」
ルゥ:「 さてピーターさん 」
ルゥ:「 人に角はありますか? 」
ピーター:「・・・」
ルゥ:「 さて 」
ピーター:いつもなら角があったって人って答えるのに、答えられない
ルゥ:「 親たちは”ソレ”が何かを知っているわけですから 」
ルゥ:「 当然弾圧されます。 当たり前ですね、自分達と違うものは恐怖の対象でしかありません 」
ピーター:「・・・っ・・・」涙を流した
ルゥ:「 それからその子供に対して、、、語るまでも無いでしょうか 」
ルゥ:「 どうしましたピーターさん 」
ピーター:「だって・・・おかしいじゃないか・・・」
ルゥ:「 まだこの昔話は続きますがどうしますか 」
ルゥ:いたって無表情であり、いつもの表情とはなんら変わりはない
ピーター:「続けて・・・いや・・・続けて欲しい。」
ルゥ:「 そうですか 」
ルゥ:「 まぁこの昔話では割愛されていますが色々あったらしいです 」
ルゥ:「 そして運命の歯車はだんだんと、ズレを見せ始めます 」
ルゥ:「 父親が亡くなりました。 どうやら子供に無理をさせまいと頑張りすぎたようです 」
ルゥ:「 とはいえ子供の方を向いていたわけではなく、別の方を向いていたので 」
ルゥ:「 子供のことは殆ど見てはいなかったようですが 」
ルゥ:「 残されたのは母親と娘、ふたりきり 」
ピーター:「・・・っ・・・」涙が止まらなくなっている
ルゥ:「 何が悪いといえば何が悪いのでしょうね 」
ルゥ:「 ただ、神は傍観者に徹していたわけではなかったようで 」
ルゥ:「 先にも出てきた貴族はこう提案しました 」
ルゥ:「 『遠く離れた地に君のような人でも受け入れてくれるところがあるらしい』 、と」
ルゥ:「 その子供は迷うことなくその提案を呑み、旅立っていきました 」
ルゥ:「 ふう 」
ルゥ:「 ここでこの話は終わりです 」
ルゥ:「 その子供がどうしているかは分かりません 」
ピーター:「・・・っ・・・」
ピーター:「なんで・・・」
ルゥ:「 はい 」
ピーター:「なんでそんなにルゥが、苦しんで生きてこないと、いけなかったんだろう・・・」
ルゥ:「 へ? 」
ピーター:「どうしてこうも・・・」
ルゥ:「 ただのお話ですよ、私の話ではありません 」
ピーター:「・・・嘘、なんだろ」
ルゥ:「 どうしてそう思うのです? 」
ピーター:「目が・・・真剣だったから。表情が、動いてたから。」
ルゥ:「 貴方はどこを見て話を聞いていたのですか 」
ピーター:「ルゥの全て。表情から目、心、動き。全て」
ルゥ:「 ・・・ 」 ふい、と視線を川へ向けて
ピーター:「ルゥには、ここで引いて欲しくなかったから。逃げて欲しくなかったから。隠して欲しくなかったから。」
ピーター:「ルゥにルゥが生きてきたことを、否定して欲しくなかったから・・・」
ルゥ:「 ですから私の話ではないです、と 」 ため息一つ
ピーター:「ルゥが辛い中一生懸命生きてきたってことを、俺自信も否定したくなかったから・・・」
ルゥ:「 ですから、、、 」
ピーター:「なんで!」
ピーター:「隠すことなんてないじゃんか!ルゥは今まで一生懸命生きてきたんだよ!」
ピーター:「ルゥなりに生きていこうって、がんばって・・・きたんじゃないか・・・」
ルゥ:「 皆さん全力で生きていますよ、ピーターさんだってそうでしょう? 」
ピーター:「そうだよ!俺だって全力で生きてるさ!だから、だからルゥには否定してほしくないんだよ・・・」
ピーター:「寂しい中生きてきたんだろ!?辛い中生きてきたんだろ!?俺だってそうさ!だからルゥには、隠してほしくない・・・」
ルゥ:「 ふぅ 」
ピーター:「・・・」
ルゥ:「 大体私に角があると思いますか? 」
ピーター:「・・・ある。俺はそう思うよ。だってルゥは、何も悪くないのに、振り回されてきたんだろ
ルゥ:「 仮に私がその物語の子供だったとしたら 」
ルゥ:「 それが運命だ、とそう思うのではないでしょうか 」
ピーター:「運命だって・・・そういう過去があったって・・・そこから。」
ピーター:「そこから変わることだって出来るし、新しい自分に気づくことだって、できる」
ルゥ:「 ええ 」
ルゥ:「 ですが生まれたときから抱えている爆弾、これはいつまでもつきまといますよ 」
ピーター:「もしかしたら、それにまた襲われる時がくるかもしれない。でも、ルゥはきっと、そんな運命を背負って、自分をつくってきたんだろ。一生懸命つくってきたんだ。」
ピーター:「そんな爆弾を持ちながら、しっかり地面を踏みしめて、ここまで歩いてきたんだ」
ピーター:「それは誇れることだし、もう二度と可哀想な子が出てこないよう、がんばることだって出来る」
ピーター:「ルゥは、優しいルゥで、生きてきたんだろ。そんなルゥを俺は好きになったんだ。」
ルゥ:「 どうして 」
ルゥ:「 どうして、ピーターさんはそういい切れるのですか 」
ルゥ:「 分かりますかね、今まで仲良く遊んでいた友達が 」
ルゥ:「 手のひらを返して襲ってくる恐怖を 」
ピーター:「ルゥが・・・叫んでるからだよ。そしてそれは、俺も一度は感じた恐怖だから。」
ルゥ:「 今まで笑顔で接してくれていた近所のおばさんおじさんが 」
ルゥ:「 ゴミやそれらを見るような目で私を見る事を 」
ルゥ:「 何度、、、、何度この身を捨てたいと思った事か 」
ルゥ:「 分かりますかね、ピーターさん 」
ルゥ:一歩下がり、足元の草がくしゃりと音を立て
ピーター:「分かるさっ!」すぐに追いかけ、ルゥを抱きしめる
ピーター:「やっと・・・やっとルゥが話してくれたんだ・・・」
ピーター:「だからもうそんなに・・・苦しまなくてもいいんだよ・・・」
ルゥ:「 言葉だけならどうとでもいえるじゃないですか! 」 ええいはなせ
ピーター:「言葉だけじゃない!」
ルゥ:「 現にここに来るまで幾度となく騙されかけたと思っているのです! 」
ルゥ:みしみしと音を立て、額から角が伸び
ピーター:「分かるさ!でも、ルゥはそんな中、一生懸命生きてきたんだろ!今それを俺に話してくれたじゃないか!」
ルゥ:肌は一層と青白く、暴れた拍子に薄くはだけた身体には黒い紋が浮かび上がる
ルゥ:「 貴方は少なくともこんな化け物ではないでしょう!? 」
ルゥ:「 虐げられていた? ははは、笑わせますね 」
ピーター:「姿形なんて関係ない!!ルゥは優しいルゥじゃないか!!化け物なんかじゃない!」
ルゥ:「 次元が、レベルが、向けられる悪意の大きさが 」
ルゥ:「 どれだけのものだと思っているのです!? 」
ピーター:「だから、もうそんな悲しいことは言わないでくれよ!そんなに苦しむことなんてないじゃないか!」
ピーター:「俺だって辛くなるから・・・もう止めてくれよ!!」ルゥを思い切り抱き寄せる
ルゥ:両目から伸びる二筋の透明なラインは次第に大きく、静かに広がっていく
ピーター:「もう、そんなに苦しまなくていいんだよ、仲間だっているんだよ。もっとルゥは、自由に生きていけるんだよ・・・」ルゥの顔を、自分の胸に思い切り抱き寄せ、背中をさする
ルゥ:「 離せ! 私はどこへなりとも消えるのです! 」 拳や足に魔力を込め、激しく暴れる
ピーター:「離すもんか!今ルゥがどこかへ行っちゃったら、俺が悲しいから!みんなだって悲しくなるから!ルゥのことを思っている人たちが、たくさんいるから!!」
ピーター:「ルゥはもう孤独じゃないんだよ!」
ルゥ:「 言葉! だけ、でなら! なんとでも、、、ッ! 」 
ピーター:「もう、分かるだろ!言葉だけじゃないって、体でだって、心でだって訴えてる!」
ルゥ:「 うるさいっ! うるさいうるさいうるさいッ! 」
ルゥ:突き飛ばす!
ピーター:「ぐあっ・・・負けて・・・たまるか!」
ピーター:もう一度抱きしめる
ルゥ:抱きしめようとするその手を振り切って、川の中へ
ピーター:「逃げないでくれよ!」必死で追う
ピーター:「もう、逃げなくていいんだ!真っ向から立ち向かったって、自由なんだよ!許してくれない人なんてもう居ないんだよ!」
ルゥ:「 来るな人間ッ! 忌み子の、、生まれながらに穢れている物の事など考えたことはないだろう!? 」
ピーター:「そんな訳ないじゃんか!もしそうだったらこんなに叫ぶもんか!!ルゥだって「穢れ」てなんかいないんだよ!!」
ピーター:「穢れなんていわれてるだけで、心の中まで穢れてるわけないじゃんか!!今まで生きてきた軌跡が、穢れてるわけないじゃんか!!」
ルゥ:「 どうしてそんな事が言える!! お前も結局口だけだろう!!! 」
ピーター:「口だけじゃないって何度も言ってるじゃんか!俺だって生きてきたんだよ、他の人とは違うんだよ!!」
ルゥ:「 うるさいっ! くるな! どっかいけ!! 」
ピーター:「口だけでここまでがんばれてたまるか!俺の魂、体、心、全てが叫んでるんだよ!!」
ピーター:「ルゥのことが好きだから!!心の底から好きだから!!他の人みたいにどっかへいったりはしない!ずっと傍にいる!」
ルゥ:「 もういい! 人間なんて口先だけならどうとでもいえるんだッ!! 」
ピーター:「そんな寂しいこというなって、言ってるだろ!!」思い切り抱き寄せる
ピーター:そしてピーターはルゥの唇に、キスをした
ルゥ:「 来るなっていってr、、、んぅっ!? 」 もがもが
ルゥ:「 んっ!  、、んぅぅうっ!! 」 無我夢中で殴りつけてはいるものの
ピーター:キスをしたままピーターは離れない。
ルゥ:「 ぅぅぅ、、、はn、、んぐぅ 」 だんだん身体から力が抜け、殴る勢いがだんだんと収まり
ルゥ:「 、、、、ぅぅうう 」 胸に手でしがみつき
ルゥ:「 うぅうううぅぅううう 」 ぽす、ぽすと弱い力で胸を叩く
ピーター:「・・・」抱きしめる力は一向に弱まらない
ルゥ:「 、、、ぷはっ 」
ルゥ:「 げほっ、   げほっ、げほっ 」
ピーター:「・・・」泣きと照れがまじった顔で、ルゥを見つめる
ルゥ:「 、、、、、、でよ 」
ルゥ:ぐずぐず
ピーター:「・・・おうっ」
ルゥ:「 逃げないで、、、私の前から絶対に消えないでよ、、、! 」
ピーター:「・・・もちろん。絶対に消えることなんてないさ。」
ルゥ:「 口先だけだったら殺してやるんだから、、、! 」
ピーター:「おう殺せ。絶対にそんなことはないから。」
ピーター:真剣な顔で
ピーター:「よし、じゃあ冷えただろ。」自分のマントをルゥにかける
ルゥ:「 あんただってそうでしょ、、、 」
ピーター:「俺は大丈夫だぜ。」にかっと笑う
ルゥ:「 、、、、、じゃない 」 下向いてぶつぶつ
ピーター:「ん?何?」
ルゥ:「 一緒に入れば良いでしょ! 」 ><
ピーター:「・・・」顔が真っ赤になる
ピーター:「・・・おうっ!」